~厳しい冬にも負けない小さな生命の不思議~
・越冬
日本に生息するオオクワガタ、ヒラタクワガタ、コクワガタ等の長命な種は越冬することができる。
自然界では10月ごろから越冬する準備をはじめ5月頃まで越冬します。
人工飼育では11月から3月中旬まで越冬させます。
野外の物置やベランダの日陰、家の中では玄関先などの寒い場所をえらんで管理します。
越冬中のエサの交換は不要で、1ヶ月に1度、マットが乾燥してないか確認するぐらいです。
寒冷地では屋外より家の中の寒い場所にて管理します。
野外で管理する場合は大きめのケースでマットを多めに引き詰めて外気温の影響をあまり受けないようにします。
越冬させることにより、一年を通じて暖かい場所で飼育している個体より長生きする傾向にあります。外産ヒラタ(幼虫、成虫)などは越冬する習性はありません。
気温が低いと仮死状態になり、10℃以下の環境が長く続くと死亡するおそれがあります。
少しぐらいの低温が続いても死亡しませんが、できるだけ暖かい部屋に置き、エサを与える必要があります。
越冬する日本の昆虫は四季を通じて身に着けた進化なのかもしれません。
・越冬とは?
生き物が色々な方法を使い、寒い冬を乗り越えること。
・冬眠とは?
体の機能を低下させ、代謝を減らして小型の哺乳動物(ヤマネ、コウモリ、ハムスターなど)冬の気温の低下とともに体温を下げて気温と同じくらいにまで下げてしまう。
体温が0℃近くに低下しても脳や臓器の活動は抑えられていますが機能しています。
低下した体温は定期的に活動体温まで上昇し再び体温を低下させます。
このように代謝活動を低下させたりして冬季を過ごすことを冬眠と言います。
・冬休眠
冬が近づくことで温度が低くなり越冬する為に、変温動物(昆虫類)は体内で不凍成分を分泌して、糖類、核酸、タンパク質、膜脂質などに変化がみられ仮死状態になり冬季を過ごします。
冬休眠中の幼虫は発育休止状態ですので成長しません。休眠している成虫は温度が上がれば動き出しますが、体内の構造が変化している為、すぐには繁殖はできません。
・夏休眠
夏休眠はチョウ、ハエ、テントウムシなどに多くみられ、日長と温度に関係しており、十分な温度があるのに蛹の発育しなかったり、活動していた成虫が夏場に一時的活動を停止して、暑い時期は樹皮のあいだや障害物に隠れ、秋が来るまで夏休眠します。
・オオクワガタ、ヒラタクワガタ、コクワガタ等の越冬
野外では夏場に産卵や活動していた成虫は10月ごろから樹洞や樹皮の間に隠れて越冬する準備をはじめてます。
樹洞や樹皮の間に隠れている。ほとんどの成虫は冬の寒さや乾燥に耐え切れず、死んでしまいます。
越冬に成功した成虫は5月ごろに再び活動をはじめます。
オオクワガタ越冬幼虫などは2年1化1越年(幼虫で2年過ごし夏に羽化して翌年に活動)が多く、冬季は体が凍らないように不凍成分を分泌し、2.3年は越冬をして夏に成虫になります。
夏に羽化した新成虫はそのまま木の内部の蛹室にとどまり翌年まで越冬します。
新成虫の場合は温度変化の少ない蛹室にて越冬するので死亡する個体は少ないようです。
(写真:11月、樹皮から現れた、越冬する前のオオクワ)
・ノコギリクワガタ、ミヤマクワガタの越冬
ノコギリクワガタ、ミヤマクワガタの成虫の寿命は約1年です。
通常の幼虫は2年1化1越年で夏に羽化した新成虫は蛹室にて越冬します。
野外に出て活動した成虫は寿命が尽きて死んでしまいますが、中には羽化した年に活動を始める個体もいます。
そのような新成虫は飼育下において1年近く生きるケースがあります。たとえ新成虫でもミヤマクワガタやノコギリクワガタは、樹洞や土中に潜る習性がないので越冬できずに死んでしまいます。
(写真:木の根の土中から出てきた越冬ミヤマ)
・越冬させる前に用意する飼育用品
●プラスチックケース(ミニ、小、中)
※写真解説は小ケースの画像です。
●樹皮や落ち葉など
●針葉樹マット
●産卵木
●昆虫ゼリー
●保湿シート
・① 越冬用マットをケースに敷く
越冬マットをケースに5cmほどマットを入れて硬く詰めます。
寒冷地なら多めにマットを敷きます。
越冬マットは水分が蒸発しにくいマットなので加水する必要はありません。
・② 産卵木を半分に割る
産卵木をナタなどで半分に割ります。(当店でも依頼があれば半分に割り発送します。)
ミニケースなら1本、小ケースなら1~2本 中ケースなら3~4本を埋め込みます。
・③ 産卵木の上から針葉樹マットをケースに敷く
並べた産卵木の上から越冬用マットを産卵木が隠れるくらい敷き硬く詰めます。
・④ 樹皮などを置く
転倒防止や上部からの冷気を遮断するために樹皮や枯葉、小枝などを置き、成虫をサイドからもぐるように入れて完成です。
越冬中でも暖かい日が続くと活動するのでエサは入れて置きます。