~大切な自然を守るために、知ってほしいこと。~
・台場クヌギ
(ブナ科コナラ属 学名:Quercus acutissima)
オオクワガタが生息する関西の台場クヌギは宅地開発や乱獲により少なくなりました。
こうした採集状況が続けば近い将来、関西から台場クヌギが無くなるかもしれません。
台場クヌギを利用するのはオオクワガタだけではなく、人間を初め様々な生き物たちが利用しております。
・クヌギの文化と自然環境
里山の人たちは炭をつくるために台場クヌギの枝を2mの高さで切り、炭の原料やシイタケのほだ木に利用されています。その炭でくらしている方々も多く、代々受け継がれた伝統ある文化です。
クヌギはある一定期間で枝を切ることにより、台木は大きく膨らんだ形状ななります。大きく膨らんだ台木にできる洞は様々な生き物たちの多様性を守るはたらきをしています。
夏場は樹液を求めて、多くの昆虫が集まり、その集まった昆虫を求めてカエルやヘビなども集まってきます。大きな洞になるとフクロウをはじめ様々な鳥達がそこで産卵し子育てをしています。そのような自然環境を理解してマナーのある採集を心がけましょう。
・宅地開発
宅地開発により、禿山となってしまったクヌギの森。
たくさんのクヌギが生えていたのですが…
・フクロウ
(フクロウ目 フクロウ科 学名:Strix uralensis)
平地や低山の森に生息していて、昼は台場クヌギなどの洞や岩の間などで休んでいて、
夜になると活動を始める。 野ネズミ、モグラなどの哺乳類や昆虫類などを主食としている。
・シジュウカラ
(スズメ目シジュウカラ科 学名:Parus major)
平地から山地のいろいろな林に生息し、昆虫や植物の種子や果実を食べます。
樹木の洞や石垣の隙間などに巣をつくります。
・サビキコリ
(コメツキムシ科 サビキコリ亜科 学名:Agrypnus binodulus binodulus)
樹皮に似た模様をしています。成虫は樹液に集まり、
幼虫は朽木の中にいる他の虫の幼虫を食べます。
灯火採集でもよく飛んできます。
※真ん中の灰色の虫がサビキコリ。
・キマワリ
(ゴミムシダマシ科 キマワリ亜科 学名:Plesiophthalmus nigrocyaneus)
クヌギやナラ以外の樹木にも多く見られます。
キマワリの幼虫は人工飼育に使う産卵木の中にも多く入っています。
幼虫はお尻が凹んでいるので見分けがつきます。
雑食性なのでクワガタの幼虫に危害を加える恐れはありません。
※矢印の虫がキマワリ。
・キマワリ幼虫
幼虫はお尻が凹んでいるので見分けがつきます。
雑食性なのでクワガタの幼虫に危害を加える恐れはありません。
・ヨツボシオオキスイ
(カブトムシ亜目 オオキスイムシ科 学名:Helota gemmata)
樹液にて多く見られる光沢のある黒色で、上翅に4つの黄色い紋がある。
幼虫は柔らかい材に多く他の幼虫なども捕食する。
※写真中央の、背中に白い斑点がある虫がヨツボシオオキスイ。
背中に4つの星があるように見えるから「ヨツボシ」。
・ヤマナメクジ
(ナメクジ科 学名:Meghimatium fruhstorferi)
大型種のナメクジで、体色はヒキガエルのような色をしており、
大きなものは体長は20cmにもなる。
体は分厚く、触角は短く草食性で、クヌギに付着したコケやキノコの胞子などを食べる。
・オオゾウムシ
(オサゾウムシ科 学名:Rhynchophoridae Sipalinus gigas)
名前はゾウの鼻のように長い口吻から名付けられたました。
5月~7月に多く樹液に集まり、成虫は1年以上の長寿で冬場でも朽木にて採集できます。
体色は新成虫のうちは白ぽいが成熟するにつれて黒くなる。
・ムネアカオオアリ
(ヤマアリ亜科学名:Camponotus obscuripes Mayr)
体色は黒色と赤色(または黄褐色~赤褐色)夏場は樹液にも集まり、朽木に巣を造ります。
冬場は集団で越冬しています。このアリの巣がある所では、
他の幼虫もあまり入っていません。
・ケブカクロオオアリ
(ヤマアリ亜科学名:Camponotus yessensis Teranishi)
体色は黒色で光沢がある。朽木に巣を造ります。冬場は集団で越冬しています。
・エグリゴミムシダマシ
(ゴミムシダマシ科学名:Tenebrionidae Uloma marseuli)
体色は赤褐色で幼虫は水分の多い朽木を好み幼虫と成虫で越冬します。
・ナガニジゴミムシダマシ
(キノコゴミムシダマシ亜科 学名:Ceropria induta)
黒色で虹色の光沢がある。
朽木に生えたカワラダケなどのキノコを食べる。
冬場は朽木にて越冬します。
・ヨツコブゴミムシダマシ
(ゴミムシダマシ科学名:Tenebrionidae Uloma bonzica)
♂の前胸に半円形の凹みがあり4つの突起があるのでヨツコブと名づけられました。
エグリゴミムシダマシより少し大型です。幼虫と成虫で越冬します。
・コアシダカグモ
(アシダカグモ科学名:Heteropoda forcipata)20-25mm
樹木や倒木の根と土の間にて越冬する。樹液などに集まる昆虫や蛾などを捕食する。
※小さなアマガエルを捕らえているところを発見したこともあります。
・トビズムカデとアカズムカデ
(オオムカデ目 学名:Scolopendromorpha)
洞や樹皮の間に住み、夜行性で樹液に集まる昆虫など捕食します。
毒牙を持ち、咬まれると痛く腫れ上がります。冬場の朽木割りにもよく見かけます。
・スズメバチ
(スズメバチ亜科学名:Vespa analis)
体長22-30mmの中型のスズメバチである。巣は、樹上につくることが多い。
・ヘビトンボ
(アミメカゲロウ目学名:Protohermes grandis)
首が長く、ヘビのようなので名づけられた。トンボとセミのようにも見えます。
樹液にも集まり、鋭い顎を持ち蛾など小型の昆虫を食べます。
幼虫は川などに生息しています。
・クビグロアカサシガメ
(サシガメ科 学名:Haematoloecha delibuta)
頭部は黒く前胸や上翅は鮮やか赤色です。♂♀のペアで越冬しているところを見かけます。
・ボクトウガ幼虫
(チョウ目 ボクトウガ科学名:Cossus jezoensis)
幼虫はクヌギなどの広葉樹に生息しボクトウガの幼虫が掘った穴から樹液がでます。
その樹液の出ている入口で待ち構えて集まる昆虫を鋭い顎を使い補食します。
・アカハライモリ
(有尾目 イモリ科学名:Cynops pyrrhogaster)
成体は平地から山地の水の綺麗な池、流れの穏やかな川に住んでいます。
日本固有の種であり小さい幼体は木の根や倒木などの陸上で生息し昆虫などを捕食します。
皮膚にフグ毒と同じテトロドトキシンがあります。触ったら手をよく洗いましょう。
・ニホンヤモリ
(ヤモリ科 学名:Gekko japonicus)
夜行性で外灯に集まる昆虫などを捕食しています。
民家の納屋や軒下に多く、野外で見かけるのはめずらしくて、外灯の近くの樹木だと樹液に集まる昆虫を求めてやって来るようです。
環境に合わせて体色を変え敵に襲われると尾を自切して逃げます。ヤモリも爬虫類に多く見られる(温度依存的性)孵化するまでの温度によって♂♀の性が決定されるようです。
・ミカドガガンボ
(ガガンボ科 ガガンボ亜科学名:Ctenacroscelis mikado)
外見は蚊に似ていますが、蚊の仲間ではなく、ハエの仲間です。
山林などの樹皮にとまっているものをよく見かける、
電灯にもよく飛来し幼虫は水辺の砂地に住んでいます。
・ヤマトタマムシ幼虫
(タマムシ科 学名:Chrysochroa fulgidissima)
成虫は緑色で綺麗な光沢があり、胸部と上翅に黒と赤の線が入る。
夏の昼間に活動し産卵する為にクヌギなどの枯れた木に飛んでくる。
幼虫は材を食べて育つ。
・ミヤマカミキリ
(カミキリムシ科 カミキリ亜科学名:Mallambyx raddei)
大型のカミキリムシで♂より♀のほうが大型で、夏場は樹液や外灯に集まる。
つかむとキイキイと音を立てる。前胸背板には横しわがあり、体色は薄い茶色である。
幼虫はクヌギなどの広葉樹に見られます。
・ニシキマイマイ
(オナジマイマイ科学名:Euhadra sandai)
殻は褐色の縞模様が現れて美しく、黒色のラインが軟体に現れる。
乾燥には弱く樹皮に生える菌糸やカビも食べる。
・ツムガタギセル
(キセルガイ科学名:Pinguiphaedusa pinguis platydera)
台場クヌギの洞や朽木で見られる。
・オオゴキブリ
(オオゴキブリ科 学名:Panesthia angustipennis )
動きが遅く集団で生活する。亜社会性を営む。
乾燥した朽木に多く、朽木やそれに付く菌やカビを食べる。
・マイマイカブリ
(オサムシ科 学名:Damaster blaptoides)
広葉樹の根の地表や樹木の幹で見られる。後翅は退化していて飛ぶことができない。
主に夜に活動し樹液などにも集まる。
カタツムリなどを食べるのでマイマイカブリという名前です。
・コカブト
(学名 Eophileurus chinensis)
幼虫は広葉樹の朽木を食べて成長します。
成虫は肉食性で昆虫の死体や樹液に集まる小さな虫も食べます。
冬場は成虫や幼虫でで越冬する。
・カワラダケ
(多孔菌サルノコシカケ科 カワラタケ属学名:Coriolus versicolor 木材白色腐朽菌)
屋根瓦のように重なって倒木などにびっしりと生えることから名づけられました。
色彩の変化が大きく、緑、青、白、茶などがあります。カワラダケによって良質に朽ちた台木にクワガタムシは産卵します。
一般的にカワラダケの生えている木に多く産卵すると言われていますが、カワラダケじゃないと産まない!というほどそんなにデリケートな種ではありません。人工飼育ではシイタケ菌にて朽ちた木に産卵します。自然でシイタケにて朽ちた立ち枯れを探すほうが困難です。
・ニクウスバタケ
(サルノコシカケ科、カワラタケ属学名:Coriolus brevis Aoshima)
傘の色がオレンジ色の色調を帯びる。オレンジ色のカワラダケのようである。
関西では良く目にするキノコでクワガタはニクウスバタケの生える台木を好みます。
・モミジウロコタケ
(ウロコタケ科 カタウロコタケ属学名:Xylobolus spectabilis )
傘は扇形で、多数の傘が重なり合って群生する少し枯れたニクウスバタケにも似ています。
・~してはいけない事!~
ここからは、採取する上で絶対にしてはいけないことをご紹介します。マナーを守って、正しい採取方法で昆虫採集を楽しみましょう!
←※まだ生きている木です。めちゃくちゃにされてます。
誰がこんなことを…!
【朽木崩し】
朽木崩しの目安としてはカワラタケ属の生えている倒木や立ち枯れを探します。
通常はキノコが劣化し枯れたような状態が良いと言われていますが、キノコも1年を通じて同じ状態ではなく、四季によって枯れたり生えたりしています。
それ以外にあらゆる外敵など(ナメクジ類、キノコムシ類、キノコバエ類、トビムシ類及び菌寄生菌)の影響を受けます。
たとえ外見上ではキノコが発生していなくても樹皮下の材の中に菌糸が蔓延している場合もあります。
生木や半枯れの状態では硬い木が多く腐朽菌にて良質な材に分解されていないのでクワガタの幼虫は生息できません。
手当たりしだい削るのではなく木の状態をよく見極めて長く付き合えるように少しずつ削るようにしましょう。
【タバコポイ捨て】
タバコの葉の部分はナス科の植物の葉なので早く自然にもどりますが、吸殻フィルターは自然に戻るまで時間が掛かります。
フィルターはアセテート繊維からできており、アセテート繊維はセルロースを原料に、酢酸を反応させたアセチルセルロースより作られる繊維質です。
天然素材なので細菌などの微生物の働きで分解されるますが、分解されるまでのあいだに哺乳類や鳥類などが食べたりします。フィルターは様々な生き物の糞からも発見されております。
【空き缶ポイ捨て】
スチール缶は鉄から形成されていますので、バクテリアによって直接または間接的に自然分解されますが、捨てられたスチール缶が自然分解されるまで、数10年以上の歳月を要します。
アルミ缶は難分解性物質ですのでスチール缶よりさらに時間が掛かります。スチール缶はコーヒーやお茶などアルミ缶は炭酸飲料に使われています。
【煙幕】
マナーのない採集者が煙幕などを洞の中に入れてクワガタを追い出すのに使います。
木やそこに集まるすべての生き物に悪影響を及ぼします。
それに山火事になる恐れがあるのでやめましよう。
【生木や洞の破壊】
生きている木などは絶対に傷つけてはいけません。生木でも少し枯れた部分があります。(半枯れ)
幼虫を採集する為にその半枯れ部分を削ると、そこから大量に水が入り木全体が枯れてしまいます。夏場の採集で洞の中にクワガタが入っていても洞を破壊し煙幕を入れたり、無理に引きずり出さないようにしましょう。
(刺激を与えると警戒してトラップに掛からなくなります。)
もし洞の中のクワガタを発見したら洞の上と下に静かにトラップを仕掛けて様子をうかがいます。
クワガタは匂いに誘われてかならず出てきます。匂いに誘われ出てくるクワガタを見ていると感動的です。余裕のある採集をしましょう。
【伐採】
ニュース番組でマナーのない採集者がオオクワガタ欲しさに台木ごとチェンソーで伐採し持ち去られる番組を見ました。
本当にそんな悪い人がいているのか半信半疑でしたが、今から8年前に友人が和歌山にてオオクワガタを数頭採集したことが新聞に掲載されました。
記載されてすぐに採集した巨木とその近くの木がチェンソーにて持ち帰られました。その木はサクラの木で春になると綺麗な花が咲きます。木は自分だけの物だけではありません。
木は見る人に感動を与え、木から得る収入で生活している方々もいらっしゃいます。
無謀な伐採や生木を傷つけないようにしましょう。
【駐車】
山林に駐車する時は、メモに携帯などの連絡先を書いてフロントガラスなどに貼っておくようにしましょう。