〜大型個体飼育方法〜
以下に紹介する飼育方法は当社の大型個体の飼育方法です。
これが絶対的な方法だというわけではありません。
また、一般的なオオクワの飼育方法に従って飼育すれば大型もできます。
しかし、彼等のことを良く理解し、飼育すればさらに大型が羽化するものだと思います。
大型個体が羽化したときにはもうこの魅力からは逃れられません。
これがオオクワ飼育の極みというものではないでしょうか。
【親種】
@ 大型を作出するには少しでも大きいサイズを使用します。
A 気に入った形や凹み(ディンプル)のない綺麗な個体を選びます。
B ♀は頭部、前胸が太いものを選びます。
小型の個体なら成熟も早く♂で2ヶ月♀で3ヶ月で産卵可能になるのに比べて、
大型個体なら成熟するのも遅く♂で4ヶ月〜6ヶ月、♀で6ヶ月〜1年を経過した個体を使用します。
♀が成熟していないと無精卵が多く産卵数も減少します。
B-Fangなど50ミリを越える大型の♀は1年以上経過した個体を使用しております。
♀が大きければ卵も大きく幼虫も大きなものが孵化します。
孵化する幼虫の頭部は卵のサイズに合わせて膨れます。★画像 孵化卵
【ペアリング】
ペアリングの方法
@ 産卵セットを組んでその中に♂と♀を同居さる方法
A 小さめのケース(ミニ、小)にて一定期間同居させる方法
B ♂♀をカップなどに入れて目の前でペアリングさせる方法
一般のペアリング方法は@で行います。♀が産卵木をかじりはじめたら♂を引き離します。
この方法だとペアリング中に産卵木を入れるので、♀が産卵する前に産卵木にカビが生えたりするので注意します。
当社はA、Bのペアリング方法で行います。
ペアリングはできるだけ静かな場所を選ぶことが大切です。。
Aのペアリング方法の場合は様子を見ながら1週間ほど同居させます。その後、産卵木(樹皮)の下を確認します。
♂♀が同じ場所で仲良く並んで休んでいる場合はペアリングが完了していると思って良いでしょう。
もし♂♀が別々の場所で休んでいる場合はサイドBの方法で行います。
Bの方法で穏やかに仲良く寄り添うようならペアリングが完了していると思って良いでしょう。
Bの方法でも♂が♀を追いかけたり、相性の悪い場合は一旦引き離し様子を見ます。
ペアリングが成功したら♀を一時保管(1週間)してタップリ餌を与えてから
(♀は1度受け入れた精子は産みきらなければメスの体内に蓄えられ産卵可能な状態を維持します)
良質な産卵木を1本だけ入れたケースに移し強制的に産卵させます。
産卵木は樹皮を全部めくり表面がツルツルになるまでザラついた菌糸を落として使用します。
(綺麗に菌糸を落とさないとカビや菌糸が生えやすい)
【卵〜2令幼虫】(飼育温度25℃前後)
産卵セットに♀を入れてから2〜3日ほどで♀が産卵木をかじりはじめます。
産卵痕を数ヶ所ほど確認できたらすぐに産卵ケースから産卵木を取り出しミニケースなどで保管します。
(多産させれば卵も小さくなり♀の寿命も短命になる)
産卵木を保管する際はブラシなどで表面に付着しているトビムシやマットなども綺麗に取り除き保管します。
卵で取り出す為に保管後1週間で産卵木を割るようにします。
産卵してから2週間ほどなので産卵痕を目安に割ります。
♀は産卵木に穴を掘りそこに卵を産み付けます。
その卵を産み付けた場所にオガを卵を隠すようにして詰める習性があるので、
卵を取り出す際はその詰めたオガも卵と一緒に取り出すようにします。
卵と一緒に取り出したオガをカップに敷きその上に卵を置き保管します。
孵化した幼虫は♀が噛み砕いたマットを食べながら菌糸カップに潜ります。
そして2令幼虫になるまで菌糸カップにて飼育します。
【菌糸ビン飼育1本目】(飼育温度25℃前後)
菌糸カップで保管した卵は1ヶ月半ほどで2令まで成長します。
この時点でカップから割り出し♂♀を判別します。
健康で餌食いの良い頭部の大きな♂の幼虫は場合は1500ccの菌糸ビンに入れます。
普通の♂幼虫なら850ccの菌糸ビンに♀なら550ccの菌糸ビンに入れます。
ここで病弱な幼虫や餌食いの悪い幼虫は再び菌糸カップに移し様子を見るようにしています。
幼虫を入れた1本目の菌糸ビン(550cc、850cc)はミラクルカバーに入れ、
1500ccのビンはミラクルケースにて静かな場所で保管します。
ミラクルカバーは幼虫に良い環境
(温度を一定に保つ、振動を和らげる、光を遮断し菌糸の劣化を防ぎます。)を創り出します。
エサ食いの悪い幼虫や暴れる幼虫はミラクルカバーに入れると落ち着いてエサを食べ始めます。
【菌糸ビン飼育2本目】(飼育温度25℃前後)
菌糸ビンに投入後、1ヶ月半位で表面に食痕が見えてきます。
食痕のあまり見えないビンはこのまま保管して様子を見るようにします。
食痕がよく見えるビンは餌食いが良く大型の幼虫に成長してることが多いので交換します。
この時点で♂で20グラム前後、♀で8グラムほどの幼虫は大型になる可能性が高く、
1500ccの菌糸ビンに交換します。
大型になる可能性が高い幼虫は2本目のビンで菌糸の活性が高い新鮮な餌を食べさせて、
一気に成長期に持っていくことが重要です。
そして菌糸ビンが劣化するとともに安定期を迎えさせます。
2本目の菌糸ビンは菌糸の活性が高いものを使用します。
【菌糸ビン飼育3本目】(飼育温度20〜27℃前後)
2本目に入れた菌糸ビンは2ヶ月ほど保管してから3本目に交換します。
ほとんどの幼虫が2本目の菌糸ビンにて安定期に入いっています。
幼虫はあまり移動することなく餌を食べる為、外見からはあまり食痕が見えない場合があります。
そのようなビンは蓋を開け雑菌やカビがまわっていなければこのままサイド1ヶ月ほど保管します。
最大でも3ヶ月を目安に3本目の菌糸ビンに交換します。
3本目の菌糸ビンに交換する頃には大型幼虫の体重は♂で30グラム前後で♀は12グラム前後に成長しております。
安定期に入った幼虫は餌の摂取量は少なく、あまり体重の変動はありません。
3本目の菌糸ビンはできれば少し劣化した菌糸ビンを使用します。
新鮮な菌糸ビンだと水分量も多く菌糸が活発な為、菌糸ビン内の温度も上昇するし、
交換後すぐに蛹化する幼虫も現れます。
3本目の菌糸ビンは2本目より少しずつ温度を下げて(20〜22℃)保管します。
(20℃以下だとキノコが発生しやすくなるので気をつけます。)
2本目で♂25グラム前後の幼虫と♀の幼虫は3本目に交換してから少し温度を下げて(22〜23℃)1ヶ月ほど飼育します。
それから温度を少しずつ上げて(26〜28℃)3本目の菌糸ビンのまま蛹化、羽化させます。
2本目で30グラム前後の幼虫も3本目の菌糸ビンに入れます。温度は低温(22℃)で最大で3ヶ月飼育します。
この3本目でどれだけ体重を落とさず幼虫を成熟させるかが問題です。
【菌糸ビン飼育4本目】(飼育温度21〜27℃前後)
4本目の菌糸ビンに交換する頃には幼虫の体色は黄くなっています。
体重は3本目の体重とあまり変わらなければ大型個体への期待がもてます。
菌糸ビンも3本目と同じく少し劣化した菌糸ビンを使用します。
この4本目の菌糸ビンにて蛹化、羽化させます。
4本目の菌糸ビンは21〜23℃で1ヶ月ほど飼育して(菌糸と幼虫)を安定させます。
その後、少しずつ温度を上げて26〜28℃に保ち(蛹室)を作りらせます。
そして少しずつ温度を下げて25〜26℃に保ち(蛹化、羽化)させます。
【成虫の割り出し】
4本目の菌糸ビンに入れた幼虫は大型成虫になっています。
この時点でまだ幼虫の場合は再度菌糸ビンに入れます。
成虫で羽化したての体色の赤い個体はさわらないようにします。
体色の赤い個体をさわるとその刺激により体液をだすことがあり短命で終わることがあります。
【無精卵】
♀が成熟していない早期産卵の卵は奇形卵が多く奇形卵は多分無精卵と思われます。
2週間が経過しても卵の色が黄くならず白く少し透明な場合は無精卵の可能性が高く、
特に初回の産卵にも多くみられます。♀が成熟していないケースやペアリングの失敗(受精)などがほとんどです。
完全に成熟していてペアリングが成功しているのに無精卵しか産まないなど、
まれに生殖機能異常をきたした♂または♀の可能性があります。
【幼虫が落ち着いて餌を食べずにビン内を動き回る場合】
@菌糸ビンの水分が多くビン内の温度が上昇している可能性があり低温にて飼育します。
A幼虫自体が環境に馴染めず光や振動を嫌う傾向にあるので真っ暗なケースや暗い静かな場所にて飼育します。
B菌糸ビンの銘柄やメーカーを変えた場合、エサ環境がかなり変わりますので、できれば同じ菌糸ビンを使います。
【ディンプルや凹み】
ディンプルは高温や水分の多い環境で蛹化、羽化させた場合に多くみられます。
蛹化、羽化させるときは今まで飼育していた温度よりも少し低くします。
それと血統によるディンプルもあるように思います。実験(早期羽化させ高温多湿な同じ環境、累代幼虫)の結果、
他の血統は現れる比率が高いのですが、kawajiri血統などはディンプルや凹みはほど現れません。
kawajiri血統はすべてディンプルのある個体は淘汰しております。
【♀個体の選び方も重要】
大型の♀ほど大きな卵を産みます。卵の中の幼虫の頭部は卵の大きさに合わせて発育します。
当然ですが大きな卵ほど頭部の大きな幼虫が孵化します。
頭部の小さい幼虫からは最後の一線を越える超大型個体は望めません。
しかし大型の♀でも一度に多く産ませると卵も小さくる傾向があります。
【幼虫の性質(性格)】
成虫を観察していると日中でも平気でエサを食べてすぐに環境に慣れる個体や夜にしかエサを食べず日中は姿を見せない
臆病な個体がいてます。幼虫も攻撃的なものや体を丸くして硬直した臆病な個体もいています。
オオクワガタの性質もそれぞれ違うようです。このことを頭に入れて飼育するように心がけています。
環境に慣れない臆病な幼虫は光や振動を嫌い(幼虫には眼はありませんが身体で感じとります。)
ビン内を動き回り落ち着いてエサを食べません。まずこのような幼虫は大きくなりません。
動き回る幼虫は静かな真っ暗な場所を選んで飼育します。
もともとオオクワガタは臆病な性質なので静かな環境で飼育します。
幼虫での性質が成虫になっても行動に現れるのか?次世代に遺伝するのか実験中です。
【血統】
大型血統(B-Fang)は他の幼虫より体重の平均値が高く、特に2本目からの伸び率が高いように思います。
エサも落ち着いて食べる幼虫が多く(環境に慣れやすい性質)の遺伝子を次世代に伝達しているとは思いませんが?
なぜかすぐに環境に慣れて成長期でのエサ食いの良いものが目立ちます。
環境に慣れやす幼虫は大型個体の羽化する確率が高いようです。
他の血統でも突発的に大型が羽化しますが、B-Fangと比べると幼虫の平均値は低く大型が羽化しません。
最後の一線を越える大型個体を羽化させるには平均値が高い血統の幼虫から羽化するものだと思います。
【菌糸】
今までの経験からですが天然で採集した幼虫(初令〜3令)を菌糸ビンに入れて飼育しておりますが、
落ち着いてエサを食べない個体も多く大きく育たないものが多いように感じます。
そのことから育った環境やエサの種類などを変えると環境に慣れるまで時間が掛かり大きくならないようです。
これは累代幼虫でも言えることなので初令幼虫から成熟期までは同じ菌糸で飼育します。。
【進化】
当社の血統個体は進化の過程にあります。B-Fang(大型) Black
Grace(極太) kawajiri(美麗)など
それぞれのテーマに合わせて累代しております。例えばWhite Graceは
累代も浅く中には外見では判断できない遺伝子を持った個体の存在(WB)や
柱となる系統もなくそれらを作るには多くのサンプル個体が必要となる為。
通常での世代交代が1年〜1年半ほどで行なわれるのに対して、
White Graceではエサなどに改良をほどこし早期羽化、
成熟させ半年〜1年で世代交代させております。
その得られた多数のサンプル個体の中から遺伝子を次々に取捨選択した結果、
White Graceの柱となる系統が出来上がりつつあります。
それぞれの血統でもっと凄い柱をつくり進化させて、それらを交配し【超美麗大型極太白眼個体】を作出できれば
どんなに楽しいだろうと切磋琢磨しております。。