クワガタのブリードに欠かせない産卵木。

その使い方や製造方法、産卵木に寄生する菌などをご紹介します。

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・産卵木(クヌギ)

コナラより木の芯が比較的少なく木質が少し荒いです。

雑菌が入りやすく品質に少しムラがあります。

自然界ではクヌギとアベマキの雑種も存在します。

雑種は樹皮がクヌギ以上に太くなるようです。

樹皮を剥くとアマカワはバラバラになります。

アマカワは栄養豊富な部分で雑菌やトビムシなどの被害を受けやすいので、

取り除いて使用します。

・産卵木(コナラ)

クヌギと比べて原木自体に芯が多く 、

樹皮を剥くと樹皮と材の間に薄皮のアマカワが現れます。

樹皮を剥くとアマカワは筋状です。クヌギと比べ樹皮が薄いのも特徴です。

アマカワは栄養豊富な部分で雑菌やトビムシなどの被害を受けやすいため、

取り除いて使用します。

・産卵木の雑菌・クロコブタケ

樹皮に現れるキノコは黒くて硬い小さなこぶが寄り集まってできています。

クロコブタケはシイタケ菌糸と互いに融合して拡がり、

この菌に侵されると黒色の硬い帯線が形成されます。

木の内部の変色も見られ形成された部分は非常に硬くて生木のようです。

産卵にはあまり影響ありませんが産卵木の内部の朽ち方もバラッキができ、

材飼育には適していません。

・産卵木とは

産卵木はシイタケ栽培する時のほだ木を使用します。

シイタケ栽培に利用される原木の樹種は、クヌギ・コナラが代表的ですが、その他にサクラ、カエデ、ハンノキ、クルミ、クリなどの広葉樹が使用されています。

栽培されるほだ木の寿命は採取開始から2~5年で、大きな原木になると8年位使用されます。その長い年月をかけシイタケ菌によって朽ちたほだ木を1年ほど乾燥させたものを産卵木に利用します。

野外のシイタケのほだ木にオオクワガタが産卵しないのは、ほだ木が若く良質に朽ちていないからです。(左図はシイタケ栽培の様子。)

・クロコブタケ1

クロコブタケが寄生したコナラの断面。加水すると色が浮き上がり良くわかります。

 

・クロコブタケ2

少し削りました。

 

・クロコブタケ3

菌に侵された部分が硬くなり、変色しています。

・産卵木の雑菌・ニマイガワキン

ニマイガワキン(Graphostroma platystoma)

ニマイガワキンが発生すると材の内側から樹皮を盛り上げます。

ほだ木の材でシイタケ菌糸とニマイガワキンが同じほだ木に同時に蔓延するため、

シイタケ菌と競合しほだ木の劣化が早くなるようです。

・ニマイガワキン1

樹皮を剥がしてみました。

 

・シトネタケ

シトネタケDiscinaceae Discina 樹皮に赤橙色のひも状の胞子角が発生する。

・ダイダイタケ

ダイダイタケ Inonotus xeranticus

樹皮の面に現れ、黄色や褐色のスポンジのような薄い層がある。

湿気の多い場所を好み、湿度の高い場所に発生する。

・ウロコタケ

ウロコタケ  Stereum

白色や肌色のものがあり樹皮の割れ目に入り込むように生えている。

シワタケにも似ていて成長も早いようです。

・その他の雑菌・雑虫など

・黒腐病:暖かい地方のほだ木に多く発生するこの菌にほだ木が侵されるとシイタケ菌を攻撃するため排除される。その為あまり朽ちてない産卵木が多い。

 

・トリコデルマ類:白と緑のトリコデルマがあり水分の多いほだ木に発生する。産卵木の加水が多い場合、菌種あとや切り口面から現れ、この菌が発生すると産卵しない。

 

・雑虫類樹皮や断面をよく見ると雑虫などの坑道を確認できます。

樹皮などに産卵痕を発見したら要注意です。

※ゴミムシダマシ、キマワリ、コメツキ、コクヌストなど

・雑虫退治1

①レンジに入れて加熱する方法 退治度★★

水分が少ない材には効果が不安定です。加熱しすぎると煙がでて匂いもする。

時間をかければ退治には有効。

 

②2~3日加水する方法 退治度★

加水しすぎると材の質が変わり内部の材の質により水分が浸透しない場合がある。

時間をかけても水分が浸透しない部分もある

 

③鍋に入れて炊く方法 退治度★★★

炊くことにより匂いがして材に亀裂が入り柔らかくなり材の質が変わる場合がある。

材全体に温度がまわり退治には有効

 

④携帯カイロをビニール袋に入れて酸欠させる方法 退治度★★

3日~1週間の時間が必要です。 時間をかければ退治には有効、材のストックがしやすい。

 

⑤加水後に冷凍させる方法 退治度★★★

冷凍すると材に亀裂が入る場合がある。解凍まで時間が必要です。

一気に水分を凍らせるので退治には有効

・雑虫退治2

産卵木を加水する材は1時間ほど水に漬け、半日ほど干します。

樹皮を剥がさず長時間のあいだ水に漬けるとアクが樹皮から出てきます。

(ほとんどのアクは樹皮から出てきます。)

加水は樹皮を剥がしてから行います。

材を干す目的は水分を飛ばすのではなく樹皮が剥きやすくするためです。

もう1度加水する

 

当社では樹皮や薄皮(アマカワ)を剥がしてから少し加水をします。

水に漬けて産卵木全体が沈めばOKです。

★アマカワ脱2度目の加水後は干さずにすぐに使用します。

(干している時にキノコバエなどが産卵する場合がある為。)

・参考

干して産卵木の重量を測りました  1

(材の大きさは異なりますが断面の切り方や質などはよく似たものを使用)樹皮あり加水後の重量は945グラム

 

・参考

干して産卵木の重量を測りました  2

48時間後は885グラム。

樹皮なし加水後の重量は580グラム。

48時間後は482グラム

~結果~

双方とも思うほど水分は飛ばず、半日なら水分は10グラム前後しか飛びませんでした。

・まとめ

木材は腐朽菌の作用によって朽ちます。

材の朽ち方は腐朽菌の種類よって変わります。

大きく分けて白色腐朽(白枯れ)、褐色腐朽(赤枯れ)、軟腐朽(泥枯れ)があります。

白色腐朽は広葉樹に多く、褐色腐朽は針葉樹に多い、

軟腐朽は材が土に埋まったり、水分が多いと軟腐朽が優先します。

 

産卵木に使用されるほだ木も白色腐朽菌だけではなく部分的に他の腐朽菌に影響をうけています。

 

産卵木はケース内のマットの劣化及び湿度、通気性などで発生する菌が変わります。

常に清潔に保ちダニやトビムシの発生を抑え、

産卵に適した温度、静かな環境で産卵させれば、それほど産卵木にこだわらなくても産卵します。

 

最近では、ほだ木が高騰し原木栽培はずいぶんと減っているそうです。原木栽培が減ると今まで整備されていた森林の手入れがされず生態系が変わります。

適度の伐採や落ち葉の処理をする事により、新陳代謝を促進させ生き物たちも活気づきます。

減りつつある産卵木を大切に使いましょう。